住まい手とつくり手とが一緒になって、家族の幸せのための家づくりをすることをめざします

2011年04月28日

偲ぶ

長くお付き合いいただいていた建主さんの訃報に、言葉を失いました。

19年前の設計事務所時代に、お住まいの新築を担当したとき、初めてお目にかかりました。
建築は世田谷でしたが、当時信州の天文台にお勤めだったEさんは、設計の打ち合わせに伺う度、科学者らしく寒冷地生活で得た住まいの熱環境づくりの持論を話され、若かった私は「なるほど」と興味深く伺ったものでした。

私が勤め先を離れ独立してからも、たまにメンテナンスで伺ったり、本の執筆時に事例に取り上げさせてもらったりと、ほそぼそとお付き合いが続いていました。

4年ほど前からは15年目を迎えたお住まいの、外装・耐震・断熱の強化計画を行いたいとのことで、また頻繁にお会いするようになりました。
工事を何度にも分けて少しづつ進めてきて、3月にその最終章を終えたところでした。

傷んでいたドアを造り替え。防犯性の高い鍵にこだわっておられました。
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Eさんは計画を立案し、いろんな選択肢を考え、ひとつづつ決めていくといった、過程そのものをいつも楽しんでいらっしゃいました。

外装も、塗装の遮熱性、防汚性をいろいろと検討。
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ご自宅の改修にとどまらず、所有する他の建物の利用法などでも、どんどんアイデアが沸いてくるようでした。

「ちょっと思いついたことがあるので、聞いてくれますか」とか、「私の、ああだこうだを聞いて、整理してくれませんか」などと連絡が来て、たくさんのやり取りをしました。

中には突飛に思えることや、そこまでやるの?と驚かされることもありましたが、半ば呆れながら私自身楽しんでいたと思います。

上手とは言えなかったけどDIYもお好きでした。
このあと木の枝で面格子にした木製門扉。
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考えているもののイメージを共有するための見学をと、奥さまと共にあちこちご一緒させていただきました。

狸穴の和朗フラットにも連れて行っていただきました。
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体を気遣い節制されていましたが、美味しいもの美味しい店が大好きで、よくご馳走にもなりました。

軽井沢の「カフェ・ドゥ・モロッコ」がお気に入りでした。
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軽井沢の別邸では自ら考案した様々な仕掛けが…。
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Eさんは私からみると親の年代の方でしたが、さすが科学者、パソコンを駆使するのはもちろんのこと、GPSケータイやデジカメ一眼レフ、iPad を誰より早く手に入れて、使いこなしていました。


普段はとても無愛想なのに、自慢げにメカを説明してくれる、あの少年のような笑顔が目に浮かびます。
ほぼ毎日ご自分のブログを更新されていましたが、ある日からピタッと止まっていました。

気にしながらも日が経ち…。
いつもすぐに返してくださるメールも、返信がありません。
そして今日、奥さまから他界されたことをお聞きしました。
突然の脳出血で倒れられそのまま帰らぬ人に。
「本当にごめんなさい、どなたにもお知らせせずに、身内だけで送ったの」と奥さま。

「あんなに突然行ってしまって、ほんとうに勝手な人。今になってやっと涙が出てくるの」と。
高校の同級生同士のご夫婦でしたから、55年連れ添われたのです。
夫婦の時間がそんなふうに突然終わるなんて、奥さまの心情は想像に余りあります…。

今年はちょうど2月14日にお会いしたのでチョコレートをお渡ししたら、「生涯で初めてだよ」と喜んで、その場で頬張ったEさん。
もう無理難題を投げかけてくることも、新しく手に入れたメカの自慢も聞けないかと思うと、寂しい思いで一杯です。大きな存在でした。

ヒヨドリにかじられたくちなしの説明をしてくれました。
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障害者の施設にしたいと夢を語ってくれた自由が丘の家。
叶いませんでした。
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ご冥福をお祈りします。
posted by katsumi at 01:25| 埼玉 ☀| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月26日

テレビ台

世の中、ブラウン管テレビから、液晶やプラズマへの買い替えが進んでいます。
以前設計した2軒のお宅で、時を前後してテレビ台を製作することになりました。

2軒とも昨年に、家電エコポイントの駆け込み利用で液晶テレビを購入したお宅です。

△○さん宅では、このように部屋の隅がテレビ位置でした。
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幅と奥行きがそう変わらないブラウン管テレビでは、コーナー設置が納まりよく以前はよくあったパターンです。

が新しくやってきたテレビ君は、以前に比べ幅は2倍以上で奥行きは1/3という変わり様。
コーナーでは納まりが悪い…。
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それで思い切って配置換えすることにしました。
階段下を利用して造ってあった飾り棚兼物入れがありましたが、
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これを、テレビ台に改造しました。

上部の飾り棚はかろうじて残し、下部をテレビ台と引き出し収納に。
配線は、、、電気屋さんに床下に潜ってもらい移設しました!
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元の家具に材質と色を合わせてもらったおかげで、まったく違和感の無い出来上がり。
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棚にズラリと並べていたCD類も、無駄なく引き出しに納まり、スッキリしました。
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「まるで初めからこの状態だったと思うほどなじんでいます」とは△○さんの弁。

テレビの置き場所が変わったことで、ソファも前とは逆の庭を背にした配置に変わりました。こうなると、ソファに座ったときに目に入ってくる場景もこれまでとは異なります。吹抜を介して子どもたちの居場所の2階コモンスペースが目に入るようになったのは良かった点。電話台上の本棚のゴチャゴチャが目の端にチラチラするのが困った点、とのことでした。
多分この後、△○さんの本棚スッキリ作戦が始まることでしょう。
こういうことを気にかけるって、大事なことだと思います。


もう一軒の※□さんが購入したのはAQUOSの60インチ。幅が1.45メートル!もあります。
ご夫婦とも70歳を過ぎて、旅行や観劇に出かけることが減るのを予想し、居ながらにして紀行番組や映画を存分に楽しむ為にとの選択だったそうです。
18畳と広い居間だから許されるサイズでもあります。

ご主人はソファから、夫人は食卓から見るというスタイルは以前のままで、テレビの位置・高さ・傾け具合で、「こうしたい」がはっきりしていました。
既存のスタンドではいろいろ不具合で、何より地震に無防備すぎるのが問題でした。
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置場所・高さの関係から、壁付けの固定棚方式でなく、テレビスタンド式を選択。
タモ材で「線」と「面」を組み合わせ、ちょっと無骨な雰囲気のスタンドを製作しました。
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テレビ本体は専用金物を使って、スタンドの立ち上がり部分に固定し、固めのジェルのようなシートを、脚の下4箇所に取り付けています。
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スタンドの大きさは前のテレビ台とそう変わらない仕上がりですが、金物固定と耐震シートで、「地震時にテレビが凶器に」ならない配慮をしています。
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くしくもこのスタンドの設置が3月10日でした。
翌日のあの地震は世田谷も震度5強で揺らしましたが、テレビ台は何事も無かったとのこと。胸を撫で下ろしました。
posted by katsumi at 01:57| 埼玉 ☔| Comment(0) | 住まいの設計 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月20日

SWS試験とデータの読み方

SWS試験とは、地盤調査方法のひとつ「スウェーデン式サウンディング試験」の略称です。
地盤の強度や土質を調査する方法には種々ありますが、木造住宅など比較的軽量な建物を想定した場合に、簡便に行えることから普及している方法です。

都内のある敷地での試験風景です。
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株式会社ジオテックによる調査で、戸建住宅の地盤調査・改良工事では最も実績のある会社です。
「GEODAS−ジオダス」というサイトを運営していて、全国で行った地盤調査と補強工事の情報を閲覧できるようにしています。
我々にとって、地盤の予備知識を得るには非常に便利なサービスで、国土地理院が公表する「土地条件図」と併せていつも活用させていただいています。

SWS試験をひとことで言うと、、、鉄の棒を地盤に回転貫入させその締まり具合を知る、というものです。
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今回のような機械式と、人がハンドルを回転させながら行う手動式があります。
機械式では、機械の重さと錘を合わせた重量100kgを鉄棒にかけます。
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地盤の締りがよければ鉄棒が貫入するために多くの回転を必要としますし、締りがあまり無ければ、少ない回数を記録します。回転を必要とせず重さだけで貫入が進むこともあり、こういった部分は締りが乏しいということです。

25cm貫入するごとに何回転を要したかが自動で記録され、報告データでは貫入1mあたりの半回転(180°)数に換算されます。
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鉄棒を継ぎ足しながら、5〜10mまでの測定を、5ポイントで行いました。

ガラや石などの埋蔵物があり、貫入途中鉄棒がそれにぶつかってしまうと、それ以深は測定不能となります。
これがSWS試験の短所で、今回も一箇所4.5m深さで「打撃」により終了となりました。

試験を見ていると、かなり抵抗を受けながらゆっくり回転貫入していく部分と、殆ど回転することなくストンと落ちていく部分があることがよく分かります。

支持層と自沈層の違いですね。
敷地のどの地点でも同じような深さでそれが起こっているので、敷地内で地盤構成にあまりバラツキがないことがわかります。

抜いたスクリューポイントに付着している土を見ると、表層とそう変わらない砂質であることもわかります。
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数日で、調査結果が速報データとして上がってきます。
併せて調査会社から、現状解説と地盤補強や基礎設計に対する考察が述べられています。

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設計者としても、調査結果を独自に判断する必要があります。
@ 自沈層の有無 → 沈下量の予測
A 地盤の支持力の算定 → 回転数から許容支持力を算定
B 土質:粘性土か砂質土か → 同じ回転数でも支持力に違い

調査結果から以上の点を判断します。
この判断を明快に行うために、山辺豊彦さんが提唱する「地層構成概念図」を描いて、調査地点ごとの地盤状況を把握しています。
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併せて、現場で近隣の基礎や道路のひび割れ、塀の傾きや土壌の湿気具合なども判断の参考とします。
また、近くにRC造などの重量建物があればより精密なボーリング試験を行っていて、役所でデータを閲覧できる場合があるので、これも参考にできます。

沈下量の予測が許容値を超えていたり、十分な支持力を持った層が建物のすぐ下に無いことが判断できた場合、上記のことも勘案した上、地盤を補強する方法を考えることになります。主に支持層の深さにより、どういった補強方法がよいかを判断します。

ちなみにわかりきったことですが、
なぜ地盤調査やその後の補強が必要かをおさらいすると、、、

圧密沈下が予測されたり、基礎下の支持力が不足したまま、建物を建てた場合起こるのが建物の沈下です。
中でも不均一に沈下する「不同沈下」が曲者で、建物の傾きを招きます。

これが起こると建物に無理な力が働き続けて耐震性が落ち、ドアや窓の開閉が困難になり、雨漏りや気密性が損なわれます。
生活をしていても床の傾きは住む人に負担を与えるなど、様々な不具合を引き起こします。

こうならないため、沈下自体を避ける措置として、地盤の補強を行うというものです。
…ただし地震の場合は、多くの地盤補強が揺れ対策は期待できませんし、保証も無いことはあまり知られていません。
posted by katsumi at 11:00| 埼玉 ☁| Comment(0) | 住まいの設計 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月19日

千駄木の近代和風住宅

千駄木の「旧安田楠雄邸」は、大正8年築の近代和風住宅です。
普請道楽と言われた実業化藤田好三郎が建て、関東大震災後は財閥の安田家によって住み継がれてきた建物です。
平成8年に財団法人日本ナショナルトラストに寄贈され、NPO法人「たてもの応援団」によって、管理運営がなされています。

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現在は、週2回一般公開されており、季節ごとに様々なイベントが企画されています。
建物は、庭園に面して雁行する東西に長い木造2階建てで、洋間の応接間やサンルーム、いくつもの趣向を凝らした座敷、近代的設備の台所、地下には防空壕まで備え、見所満載です。

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たてもの応援団の方々によって丁寧に清掃管理がなされていて、「愛されている建物」であることが伝わってきます。

今回私が訪問したのは、公開前の少しの時間帯。
修理依頼を受けた左官屋さんに便乗して、3.11の地震とその後の余震によって傷んだという壁を見せていただいたのでした。

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余震で擦れ落ちた壁の土

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小壁の剥がれ余震で落ちた壁土


建物の構造は軸組+土塗り壁で、不具合が現れていたのは表面部分、仕上げ塗りのジュラク壁でした。
2階の客間廻りで、柱や梁のチリ際に隙間ができ、場所によってはひび割れ、剥落がありました。チリの隙間や小さなひび割れは、塗り壁の宿命的な症状でもあるので、これらは特に直さないとのこと。
剥落部分は上塗りごと剥がして塗り直すそうです。

ほんの束の間の訪問で、じっくり見れたのは2階だけでしたが、それでもよく考えられたつくりに感じ入る部分がたくさんある建物です。
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客間から庭を眺める四間長さの縁側は、まことに伸び伸びとしたつくり。
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木の桟と揺らめく硝子越しに見せる枝垂桜が素敵です。
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書院の欄間や違い棚などの意匠は幾何学や抽象モチーフで、さすが「近代和風」。
真似したくなりました。
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照明のスイッチもGOOD!
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久々のしかも駆け足訪問でしたが、帰りには旧知のたてもの応援団・多児さんにもお会いでき、防空壕も案内いただき幸運でした。
今度はもっとゆっくり見学を、、、いえいえ次はお掃除ボランティア参加ですね。

帰りに「いせ辰谷中本店」に寄り道。
和風な一日でした。
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posted by katsumi at 14:56| 埼玉 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月12日

高須賀香取神社と権現堂桜堤

お天気に恵まれた日曜の午後、前から見たいと思っていた二つの場所の見学が叶いました。

幸手市の権現堂桜堤は有名ですね、埼玉県有数の桜の見所です。
樹齢60年を越す1000本の桜並木が、満開を迎え壮観な眺めでした。
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堤と川の間を埋める菜の花も咲き誇り、桜の淡いピンクとビビッドな黄色の組み合わせは、できすぎというくらい素敵です。

ですが、普段の年は華々しく開催される桜祭り、今年は中止だそうです。
でも大勢の人が自然の恵みを静かに楽しみ、この受難の時に生きる気力を養っているようでした。
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この堤、夏前には紫陽花、秋には曼珠沙華が斜面を埋めるそう。
その頃にはもう少し状況はよくなっていることでしょう。


高須賀香取神社は、浦和の家の施工でお世話になった工務店クオリスさんの物件です。
江戸期の社の建て替えで、限られた予算での仕事とは思えない力のこもったつくりです。
ひとつひとつの材選びや木取りに腐心して、納まりにも手を抜かない様は、浦和でも見せていただいた棟梁のこだわりですね。

幸手中の神社だけにとどまらず、たくさんの社を見て研究したというだけあって、美しいプロポーションに仕上がっています。
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梁間寸法、軒の出、屋根の反らせ具合など、その建物のスケールに合せて慎重に決めていったそうです。

日本の建物は「屋根の建物」と言われる所以を感じます。
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紅梁に海老紅梁、蛙又、肘木、斗などは前身の社から転用しており、これらの材によって寸法の相関関係が決まってしまいます。
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その中にあっても全体の形を整えるために、あちこち独自の納まりが付加されていて、さすがだなあと感心しました。

生まれ育った地で代々受け継がれる建物を手がけられるのは、大工・工務店冥利につきますね。こういうのを「地に足のついた仕事」と呼ぶのでしょう。

役目を終えた守り獅子
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posted by katsumi at 03:55| 埼玉 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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